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「つくしコラム」では障碍のこと、福祉のこと、働くこと、生きていくことを医療的な観点からお届けしていきます。

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つくしコラム

心の病は誰でもなりうる

テキスト/理事長公開/2016.7.20

 人間はどうして心(精神)を病むのでしょうか。妙な言い方ですが、人間が心を病むのは、人間が心を持ってしまったからです。他の生物には、より簡単な情動はあっても、人間と同じような複雑な心の働きは持っていません。生物進化の過程で、人間だけが心(精神)を持ってしまったのです。

 心(精神)の基盤は、発達した大脳(特に前頭葉)にあります。脳自体や、脳の中の神経回路の働きによって、心(精神)という現象が生み出されます。

 人間の心(精神)の最大の特徴は、なんといっても「ことば」を持っていることにあります。「ことば」によって記憶が可能となり歴史を持つことができ、過去や未来のことも考えられますし、文化も生み出されました。ところが、この文化というものが、ちょっとクセモノなのです。

 文化には、価値観も含まれます。その中には、「○○でなければならない」とか、「△△を目指すべきである」とかいった、「あるべき」・「すべき」という価値観や倫理観もあります。人間の生活は、girl-1237350_960_720それらにとらわれがちになります。例えば、自分の身体は休みたいという信号を発しているのに、「ここでさぼってはいかん」と文化の影響を受けた心は思ってしまい、無理をしてしまうのです。

 つまり、本能(身体的な脳)と文化(心)の間で、争いが起こってしまいます。この争いが、心の病を引き起こすもととなります。社会生活を送っていると、こういう争いは、しょっちゅう起こっています。ですから、誰でも時には不安になったりうつになったりこだわりが強くなったりぼーっとなったりするわけです。言わば、「短期間」心の病になるわけです。

 

 それが、持続的になり本格的な心の病にならないのは、たまたま周囲の人の助けがあったり、癒しや安らぎを与えてくれるものがあったりしたからです。ですから、心の病になった人とならなかった人の間に境目はなく、連続していて単に程度の問題だとも言えます。

 また、「ことば」によって、人間は目の前のことだけでなく、過去・現在・未来の多くのことを考え多くの情報を処理するようになりました。

 特に現代は、高度情報化社会・グローバル化社会で、脳がものすごくたくさんの情報処理をしなくてはならず、脳に大変な負担がかかっています。100年前の時代と比べてみるとすぐわかります。

 その結果、現在の日本では、精神疾患が最も多い病気となっています。糖尿病、癌、脳梗塞、心筋梗塞よりも多いのです。まさに誰でも、一生のうちに一度は心の病になりうる時代だと言えます。心の病の予防や、心の病になっても回復しやすい社会システムをつくることが、切望されます。

無題222

2016.7
遠山照彦