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「つくしコラム」では障碍のこと、福祉のこと、働くこと、生きていくことを医療的な観点からお届けしていきます。

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つくしコラム

新型コロナ感染症(COVID-19)のこと コロナワクチンのこと を正しく知りましょう

公開/2021.7.16

新型コロナ感染症(COVID-19)のこと コロナワクチンのこと を正しく知りましょう

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心の病は誰でもなりうる

テキスト/理事長公開/2016.7.20

 人間はどうして心(精神)を病むのでしょうか。妙な言い方ですが、人間が心を病むのは、人間が心を持ってしまったからです。他の生物には、より簡単な情動はあっても、人間と同じような複雑な心の働きは持っていません。生物進化の過程で、人間だけが心(精神)を持ってしまったのです。

 心(精神)の基盤は、発達した大脳(特に前頭葉)にあります。脳自体や、脳の中の神経回路の働きによって、心(精神)という現象が生み出されます。

 人間の心(精神)の最大の特徴は、なんといっても「ことば」を持っていることにあります。「ことば」によって記憶が可能となり歴史を持つことができ、過去や未来のことも考えられますし、文化も生み出されました。ところが、この文化というものが、ちょっとクセモノなのです。

 文化には、価値観も含まれます。その中には、「○○でなければならない」とか、「△△を目指すべきである」とかいった、「あるべき」・「すべき」という価値観や倫理観もあります。人間の生活は、girl-1237350_960_720それらにとらわれがちになります。例えば、自分の身体は休みたいという信号を発しているのに、「ここでさぼってはいかん」と文化の影響を受けた心は思ってしまい、無理をしてしまうのです。

 つまり、本能(身体的な脳)と文化(心)の間で、争いが起こってしまいます。この争いが、心の病を引き起こすもととなります。社会生活を送っていると、こういう争いは、しょっちゅう起こっています。ですから、誰でも時には不安になったりうつになったりこだわりが強くなったりぼーっとなったりするわけです。言わば、「短期間」心の病になるわけです。

 

 それが、持続的になり本格的な心の病にならないのは、たまたま周囲の人の助けがあったり、癒しや安らぎを与えてくれるものがあったりしたからです。ですから、心の病になった人とならなかった人の間に境目はなく、連続していて単に程度の問題だとも言えます。

 また、「ことば」によって、人間は目の前のことだけでなく、過去・現在・未来の多くのことを考え多くの情報を処理するようになりました。

 特に現代は、高度情報化社会・グローバル化社会で、脳がものすごくたくさんの情報処理をしなくてはならず、脳に大変な負担がかかっています。100年前の時代と比べてみるとすぐわかります。

 その結果、現在の日本では、精神疾患が最も多い病気となっています。糖尿病、癌、脳梗塞、心筋梗塞よりも多いのです。まさに誰でも、一生のうちに一度は心の病になりうる時代だと言えます。心の病の予防や、心の病になっても回復しやすい社会システムをつくることが、切望されます。

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2016.7
遠山照彦

理事長 あいさつ

テキスト/理事長公開/2016.5.2

特定非営利活動法人つくしの理事長の遠山照彦です。

私が精神科医としての研修を始めた30年あまり前のころ、精神科医療は、まだ外来も十分ではなく、精神科クリニックもごくわずかで、デイケアも全国で数えるほどしかありませんでした。精神疾患になれば、入院か退院か二者択一の時代でした。退院しても通院を止めてしまい、再発して再入院になってしまうことが多い時代でした。また、何年も精神科病院に入院している人が25万人ほどいました(これは、現在でもまだ続いていますが)。当時の精神科医療と言うと、そんな状況でした。海外の先進国では、精神科病院が縮小され、地域医療・福祉が発展しているというのに。

そうした遅れた日本の精神科医療に、大きな変化をもたらしたのが、ちっぽけな「共同作業所」だったのです。1975年頃から設立が始まり、あっという間に全国各地に広がりました。そうです、地域で暮らす精神障碍のある人たちにとって、「居場所」や「マイペースで働ける場」が、待ち望まれていたのです。

ある先輩の精神科医は言いました。「共同作業所こそ、戦後の入院中心主義の精神科医療にとって、革命的事件だ」と。事実、共同作業所のお蔭で、再入院が減りました。入退院を繰り返していた人にとって、地域で生活し続けるよりどころができたのです。

「つくしハウス」も1993年に、京都市内では6番目にスタートしました。家族や有志が中心となって寄付を集めました。初めは賃貸マンションの一室から、次に古い町屋に、そしていまの相模ビルへと、外観は大きく変わって行きました。しかし、開所以来30年余り、利用者の皆さんの「居場所」となり、利用者が元気になるように、自信を回復し生きる希望(生活目標)を見いだせるようにと、運営方針は一貫していたつもりです。

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精神障碍(発達障害もふくむ)は、人間ならば誰でもなる可能性があります。

たまたま人生の初期に、アクシデント・事故にあったみたいに、障碍をもってしまった。そこから回復するには、長い道のりがあります。誰が悪いせいでもないのに、「なんで私が?」と思ったことでしょう。もっともな怒りです。

精神科医療は発展したといっても、薬の効果は限定的です。リカバリー(回復、人生の再発展)には、薬は必須ですが、それだけではリカバリーできません。

リカバリーとは、障碍のある状態になった人が、再び希望を取り戻し目標を見出して、生活の発展のために幸せになるために、挑戦する人生を歩み続けることです。そして、「まあ障碍があっても、そこそこ今の暮らしに満足してるし、友達もいるし、これからの夢もある」といった状態に達することです。

リカバリーは、生活全体にかかわっています。狭い意味での医療だけでは、それはなしえません。本人の治ろう、前進しようとする努力と、家族やその他の支援者の支援と、地域で生活していくための施設や制度の活用も必要です。「つくしハウス」は、そういった地域の施設・地域の支援者の一つです。

「つくしハウス」では、P1040982ひとりひとりの利用者のよいところ(ストレングス=強み)をとらえて、一人一人に合った支援を考え、利用者ひとりひとりが元気になり(エンパワメントされる)、リカバリーしていくことを、基本方針としています。何故ひとりひとりなのかって? ひとりひとりのよさや希望は、それぞれ違っていますから。

「つくしハウス」を利用することで、あなたが元気になりリカバリーしていくきっかけとなったなら、こんなにうれしいことはあません。

(2016年5月)